ブロカントとか

シノンのブロカント n°4 – ディゴワン・サルグミンの花咲くブーケ

ディゴワン・サルグミンのデザート皿 BOUQUET FLEURI

前回もちらっとご紹介した、ディゴワン・サルグミン。
BOUQUET FLEURI(ブーケ・フルーリ:花咲くブーケ)シリーズのデザート皿、4枚で18€.
このお皿にひと目惚れしてしまったわたしは
1度は買わずにブロカントを出たものの、昼食をとっている間も忘れられず、
長い並木道の端っこのブースまでわざわざ戻って購入。
20€のシールが貼ってあったので、15€で交渉を始めましたが初老のマダムに
「だめだめ。20€って書いてあるでしょ。」といわれ・・・
意気消沈したところ、「これは下げられないわよ、18€までしか!」と透かさずマダム。
やった、18€で交渉成立!
マダムによると、1930~40年代のものだそう。
このお皿により初めて、Sarreguemines(サルグミン)という名前を知ったのでした。
これを買うときには、ちょっとした心の葛藤がありました。
長い長いひとりごとですので、興味のある方だけどうぞ。

道が平行に2本あって、それぞれ両脇にブロカントのブースが並んでいました。
そのお店はちょうど、1本目の引き返し地点にありました。
ふたりの店主さんが、搬入出用のバンの後部ドアを開けたところに座っていて、
前にテーブルを出して、陶器ばかりを扱っているお店でした。
ひと目そのテーブルを見たときに、わたしはこのデザート皿に釘付けになりました。
可憐な薔薇とカーネーションの絵柄といい、色合いといい、
大きさや状態の良さといい、なんて理想的なんでしょう。
でも、4枚で20€と書かれていて・・・当然よね、と泣く泣く諦めました。
(1€=114,2919円:2010年5月16日)
ブロカントでひとつのものに20€の出費、これは我が家ではありえないことです。
以前もアンティークのボタンをシートで数枚買ったときに、
22€使ってしまい、アントワヌくんに懇々と諭されたのでした。
それでもそこをしばらく離れられず、手にとって撫でるようにしたり
アントワヌくんに「すごく素敵じゃない?」といってみたりしました。
でもアントワヌくんは素っ気ない返事。
仕方ないな、と思い、後ろ髪を引かれながらもその場を離れました。
それもそのはず、いちばん最初にわたしがこの手のものを買おうとしたとき、
フランスで生まれ育った彼は「フランスの家庭の典型的な食器だよ。」といい放ち
つまり珍しくもおもしろくもない、という反応だったんです。
たとえ価値のないものでも、自分が可愛いと思えることがいちばんなんですけどね。
15~20mくらい歩いたところで、たまらずアントワヌくんに漏らしました。
「ねぇ、デザート皿のことなんだけど・・・。」
「ああ、さっきの?」
「うちには素敵なデザート皿がないし、あれ可愛かったな。」
「あれは高いよ、20€だよ?安くていいのを見つけよう、ね?」
と説得され、またもや断念。
しっかりと頭に刻まれてしまった薔薇模様のイメージを振り払いつつ
引き返すように隣の道のブースたちを見てまわったのですが、もはや心ここにあらず。
進むごとに遠のいていくデザート皿のブース。
遠のくたびにふくらんでいく、デザート皿への愛着。
でも、家族4人でのブロカント散策、もう引き返せる距離ではありませんでした。
帰りがけに、行きに見たミニチュアサイズのかごを扱うお店を通りました。
気に入ったので、帰りにまた交渉しようと思っていたのですが、店主がいませんでした。
だけどもう、そのかごのことなど、どうでもよくなっていました。
そうしてブロカントを出て、レストランへ行きました。
メニューを見ながら「ランチはいらないから、あのお皿を買って!」と
口にしようか迷いながらも、そうもいかない、とみんなと同じランチセットを注文。
待っている間も食べている間も、お皿たちへの思いはつのるばかり。
(あの状態で4つそろってるのは、もし見つかってももっと高いよね・・・)
(4枚で20€だったら1枚5€, それほど高くはないんじゃない?)
(ちょうど薔薇の絵柄のお皿が欲しかったのよね・・・)
(デザート皿、特別可愛いのはうちにないし・・・)
(あれでデザートを出したら、すごく素敵だろうな・・・)
(あんな理想的なお皿を逃したが最後、ずっと後悔するだろうな・・・)
もう、それこそ走馬灯の勢いでいろんな思いが行ったり来たり。
ランチもキーワードのデザートにさしかかり、もう耐えられなくなりました。
心臓がどきどきして苦しくなってきたので、横に座っているアントワヌくんに
「ねぇ・・・
 ごめん、だけどあのデザート皿、連れて帰らなかったらずっと後悔する。
 ずっと頭から離れなくて、なんだか具合悪くなってきちゃった。」
と告げると
「それほどまでに?
 ・・・分かった、レストランを出たらあそこまで戻ろう。」
といってくれて、やっと生きた心地がしたのでした。(・・・大げさ。)
これほどまでに、物欲に支配され、押しのめされてしまうなんて。
わたしって、なんて煩悩の深い人間なんでしょう。